Vol.2では、全塾協議会中央機関に入会した一年生から質問を募集し、山田健太塾生代表にインタビューを行いました。
―――塾生代表に就任されたあとからのお話についてこれまで多く聞かれていたと思いますが、今回は山田さんが塾生代表になるまでについてお伺いしたいと思います。まずは山田さんのバックグラウンドについて教えていただけますか?
生まれは東京都武蔵野市で、小学校一年生の1学期までそこで過ごしました。その後、親の仕事の関係で小学校一年生の2学期からシンガポールに移り住み、小学校4年生の終わりまでを過ごしました。小学校4、5年生の時に日本に戻り、以前通っていた学校に復帰しました。1年生の1学期しか在籍していなかったはずなのにみんなが覚えていてくれて驚きましたが、おそらく悪がきだったから覚えていたのかもしれませんね(笑)。
―――中学受験とその後の生活について教えてください。
当時、周りの人が受験するという話を聞いて、あまり深く考えずに中学受験を決めました。住んでいた地域には早稲田実業があり、それに合格しようと思って受験したのですが、残念ながら落ちてしまいました。しかし不思議なことに、それより偏差値の高い早稲田中学に合格することができて、そこで学ぶことになりました。中学時代は文化祭や学年会議などで活動しましたが、生徒会長といった表に出るようなポジションはあまりやっていませんでした。
―――高校時代にはどのような活動をされていましたか?
高校では文化祭の準備に力を入れていました。私はステージ部門で長く関わり、参加者を増やすことで規模が大きくなるよう力を入れてきました。当時はスマートフォンの普及により、YouTubeでの練習やミラーリングなどが可能になり、ダンスや演劇などのクオリティが飛躍的に向上していました。学年全体での参加者が急増したことによりその活動が一大勢力となりました。
―――中高時代に楽しかったことや、何か思い出に残っていることはありますか?
中学1年生の時、高校2年生の先輩と共にマイケル・ジャクソンの「スリラー」を踊った経験があります。その時、自分は役者よりもスタッフ向きだと感じました。特に高校2年生の文化祭では、1年間の準備を経て多くの人に支えられ成功し、素晴らしい思い出となりました。
また、文化祭の準備では新しいアプローチを模索することが好きでした。当時、LINEのグループ通話機能がなかったため、「Popcorn Buzz」というアプリを使ったリモートでの準備を提案しました。学校での作業に代わり、自宅からでも効率的に準備が進められました。この経験はオンラインミーティングが一般的でなかった時代に、環境に依存せず協力する方法を学んだ貴重な体験でした。
―――さて、山田さんはSFC初の塾生代表としても話題になったと思います。なぜ総合政策学部を選んだのか教えてください。
高校卒業時、成績があまり良くなかったため、推薦でも進学する選択肢はありましたが、それには消極的でした。なんとなく東京大学も受けてみようと思い、結果的には浪人をすることとなりました。ちなみに現役時に総合政策学部も受験はしていて、合格はもらっていました。浪人中は河合塾で1年間勉強しましたが、2度目も東京大学に落ち、慶應義塾大学の総合政策学部に入学しました。
総合政策学部を選んだ理由は、学ぶ分野を一つに決めたくなかったからです。実際に入ってから幅広い知識を深めることができ、自分の興味が向く方向に学びを深めています。
入学してからは七夕祭実行委員会、ミュージカルサークルなどのサークルに所属し、七夕祭実行委員では役員も務めました。
―――山田さんは防災に関する研究を行っていると聞いています。大学での研究内容について少し詳しく教えてください。
私は主に通信技術と防災に関する研究を行っています。具体的には、精密体感震度を実装し、現在600万人以上のユーザーに利用してもらっています。この技術は日本人の特異な震度感覚を利用し、各地方自治体で少ない地震計の不足を補うことができます。これにより、多くのデータを集め、災害時の迅速な対応が可能になります。
また、地方自治体のBCP(事業継続計画)の改善も研究しています。災害時の復旧マニュアルや対策マニュアルを見直し、特に通信ネットワークの復旧に関する具体的な手順を提案しています。国土交通省や内閣府も通信ネットワークの復旧を重要視していますが、現行のマニュアルは具体性に欠けています。そのため、プロの知識を活用し、どのようにすれば復旧が早くなるかを研究しています。このように、通信技術と防災の2つの軸で研究を進めています。
―――すでに多くのことをなされていた中、なぜ塾生代表になろうと思ったのですか?
2020年、大学2年生になった時、コロナ禍が始まり、オンラインでの学生生活が増えました。特に1年生の友人作りが難しい状況になったと思います。この状況に対応するため、塾生代表選挙に出馬し、大学全体に対して影響力を持ちたいと考えました。七夕祭の経験から、オンラインでのイベント運営に自信があり、その能力を活かしたいと思っていました。
―――活動する上で大切にしてきたこと、座右の銘があれば教えてください。
私は「初心忘るべからず」と「Done is better than perfect.」という言葉を大切にしています。組織運営において陥りがちなのは、完璧な制度を整えないと始められないという考えです。しかし、行動を起こし、途中で改善しながら進めることが重要です。
また、「情けは人のためならず」と「生涯現役」という価値観も重んじています。特に「恩送り」の考え方に共感し、受けた恩を返すだけでなく、1割増しで他人に恩を返すことで社会全体が良くなると信じています。これらの信念を胸に、塾生代表としての役割を全うしようと考えてきました。
塾生代表としての所感をはじめとするインタビューはこちらでも行っております。是非ご覧ください。
―――日常生活での趣味や日課はありますか?
塾生代表としての生活は多忙で、暇な時間はほとんどありません。朝から晩まで会議や式典に参加しており、趣味が仕事のような状況です。そのため、暇ができると新しい仕事を始めてしまうことが多いです。
趣味として挙げられるのは…散歩かな。特に夜の散歩は涼しくて快適なので好きです。また、最近は忙しくて行けていませんが、コロナ禍の時期にはよくサウナに行っていました。外出が制限されていたため、サウナで汗をかくことがリフレッシュの手段でした。
他には、一人の時間を大切にしています。これは多くの人に驚かれることですが、頭を整理するために一人で過ごす時間が好きです。忙しい日々の中で一人の時間を作ることを心がけていて、これが自分にとってのリラックス方法です。
―――多忙と述べていましたが、1日のスケジュールを教えてもらえますか。
毎日朝6時に起床しています、日の出が早いため時にはそれよりも早く起きることもありますが(笑)。朝は8時までにメールの返信やスケジュールの確認、申請書の処理などを集中して行います。国外の友人とは朝の時間帯にZoomで交流することもあります。
その後、8時から9時には三田、日吉、SFCのいずれかのキャンパスに移動し、9時から18時までは大学職員との会議や授業、研究室訪問が中心です。特に職員との会議は時間に縛られており、忙しい時間帯となります。
18時から22時は一般の学生や団体との面談が多く、22時から24時半までは全塾協議会のミーティングをします。その後、24時半から25時にかけてメールの返信や自身の仕事を行い、2時から3時に就寝しています。
―――これまでを振り返って、今までで一番嬉しかったことと苦しかったことを教えてください。
先に苦しかったことを…。人生で最も苦しかった経験としては、中高時代に自分の決定が周囲を苦しめたことがあります。その時、他人を傷つける可能性を理解し、慎重に行動する必要性を学びました。
最も嬉しかった経験としては、大学でのイベント成功があります。文化祭や学園祭などの大きなイベントを成功させた時の達成感は特に大きく、裏方として関わることが楽しく充実感を得られると感じました。
また、2回目の塾生代表選挙に出馬した際、周囲から「負ける」と言われていました。1年目に無駄な予算を削減し、多くの所属団体の予算を削ったため、投票する団体からの支持が得られないと考えられていました。しかし、一般のサークルから、「新歓ができなければ潰れてしまうところ、山田さんが新歓を実現してくれたおかげで生き残れたので、今度は私たちが山田さんを応援します」という内容のメッセージを多く受け取りました。広く多くの人々からの支持を受けられたことは嬉しかったですね。
―――いよいよ退任を迎えるわけですが、将来の夢やビジョンはありますか。
最終的には政治家になりたいと考えています。塾生代表としての経験から、民主主義国家では大義を得ないと変革が難しいことを学びました。中高時代は会議に関与する機会が少なく、実力や正しい意見があれば物事が通るという環境にいました。しかし、大学に入り、2万8000人もの学部生がいる慶應義塾という大組織に属する中で、提案の良し悪しよりも、誰が言っているかが重要である現実に直面しました。この経験から、立場を得なければ変革は難しいと痛感しました。そのため、将来的には政治の世界に入り、日本を良くすることが私の夢です。
―――塾生代表の任期は我々にも想像できないほど長かったと思いますが、塾生代表としての期間を振り返っての総括をお願いします。
約1250日間塾生代表を務めてきましたが、振り返ってみると、一日一日が大変だったけれども楽しい思い出ばかりです。多くの新しい人との出会いもあり、それが一番の宝物だと感じています。自分がやるべきであろうことについては、個人的にはやりきったと思っています。後悔はありません。
―――塾生代表を務められた先輩として、次の塾生代表に対してのアドバイスをお願いします。
新しい塾生代表には、重要な決断を迫られる場面が多々あると思います。誰かのためになる決定が、他の誰かにとって不利益をもたらすこともあります。ルールを守ることは、時にはルール違反をする人々を排除することを意味します。そのような状況を考慮すると、厳しい決定を下さなければならない場面が必ずやってきます。
しかし、「正直さ」というのは誰かが見てくれていると信じるべきです。自分の信念に基づいて行動することが重要であり、その道を選べば、最終的には報われるということを伝えたいです。頑張ってほしいですね。
―――今年度も中央機関に入会してくれる人がたくさんいました。中央機関の新入会員へのメッセージはありますか?
新入会員には他人のために努力する姿勢が重要であり、その努力は必ず報われると伝えたいです。私は日頃から精力的に活動をしてくれている人たちの姿勢に感動しています。自分の時間を犠牲にして他人のために努力することは素晴らしいし、尊敬できること。そのような行為は必ず何らかの形で還元されると信じています。
私は、苦労や継続することの意義を評価する社会を築いていきたいと思っています。全塾協議会に参加する人たちは、他人のために尽力する組織として価値を見出している人々だと感じます。
―――長時間にわたるインタビュー、ありがとうございました。熱い言葉も聞けて嬉しかったです。塾生代表を退任された後も、新天地でご活躍されることを祈っております。
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